バーテンダー
「カッコイイお兄さんみっけ!」
「……」
甲高い女の声。
背中に凭れかかっているのは、シャンパンを浴びるほど飲んだ女だと分かった。
「ねえ。お兄さん。その服、バーテンダーだよね。この時間に煙草なんか買いに来て、店、よほど暇なんだね」
暇じゃねえんだけど、空気読めない男がいるんだよ。あのバ―には。
声を大にして言いたかったが、ゴクリと言葉を飲み込み
「そうなんですよ。どうです?このまま、うちに来て飲みなおしませんか?」
「お兄さん……その言い方さ。勘違い女なら、家に押し掛けるよ。ちゃんと、うちのバ―に来てって言わないとさ」
女がコロコロと俺の耳元で笑う。