バーテンダー
「そう。良かった。お兄さんが好きなら……嬉しい。あの男ね。酒を飲む女は嫌いだって飲ませてくれなかったの。自分は酒飲みの癖にさ……まったく女をバカにしてるヤツだった」
「そうですか……つまり……その男性と今夜は一緒じゃなかったってことですね」
「二時間前には一緒にいたんだけどね……でもね。その男と別れちゃったんだ……」
そう言って、女は俺のウナジに頭を付けて泣き始めた。
鼻を啜りながら泣いている。
「エッエッ……それでね……ヤケ酒ってヤツをさ。エッエッ……」
泣きだした女を背中から降ろして慰めることもできたが、背負ったまま、休まず歩き続けた。
「息子がね……中学に入学するまで待ってくれって……そいつが言ったんだ。おめでたいわたしはその言葉を信じてずっと待ってたの。それで、息子が中学に入ったと思ったら……今度は下の娘がって言い出したの。その子、まだ、三歳なのよ。こっちから水をぶっかけて別れてやったんだ。バカでしょ? 楽しい盛りの二十代をその男に捧げちゃった。もっと割り切って遊べば良かった。勿体ないと思わない?」