バーテンダー

女が、自分で俺の背中から飛び降りたようだった。

ずっしりとヤケに重く感じていた背中が軽くなり、ジワジワと身体が汗ばんできた。

しゃべり続けたせいか喉もカラカラだった。

「キンキンに冷えたミネラルウォーターを御馳走しますよ」

ドアを開け、女をバ―の中へと促すように後を振り返ると……

女が居なくなっていた。

バ―の両となりには街燈が点いているので辺りは非常に明るい。

なのに、女の姿が見当たらない。

どこに行った?

「……」

この場所から、一直線上にあの煙草の自販機の灯りが見えるのだけで、女の姿が見えない。

「……」

すると、大通り方面から常連客のキャバクラ嬢のマホが走り寄って来た。

「キャー!タモツさん」

相変わらず派手な服装をしていた。


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