闇夜に真紅の薔薇の咲く
軽くせき込みながらそう言うと、柚梨の大きな瞳に涙が溜まり始めた。





まずい、と朔夜の表情は反射的に強張る。





先ほどの彼女の安心させようと思った言葉はどうやら逆効果だったらしい。





みるみるうちに瞳に涙をためていく柚梨を見て焦りながら、朔夜は必死に慰める方法を探す。





プチパニックをおこす頭を使い必死に考えたが、こういう時に限って良い案は思いつかないもので。





今にも零れ落ちそうな涙を見て、朔夜は咄嗟に柚梨の手を握る。





ぎこちない笑みを浮かべると、虚をつかれたように固まった彼女にハンカチを手渡す。







「泣かないで。柚梨が走ったのは、私のためでしょう?」

「え……?」

「柚梨は、女子の視線から私を守るために走ったんでしょう?」







柚梨とはとても付き合いが長い。





だから、彼女は朔夜が女子からどういう視線を向けられているかも知っているし、それに自分がどれぐらい疲弊しきっているのかも知っている。





だから彼女は学校まで一度も止まることなく走ったのだろう。





この霞高において、一番妬みやら羨みの視線を受けないですむのは教室だから……。






朔夜にとって一番安全な場所に、柚梨は連れてきてくれた。






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