闇夜に真紅の薔薇の咲く
柚梨と朔夜のクラス、1-Aの女子たちは“顔より中身”の者が大半で、夜空に興味を示しているのはごくわずか。





ごくごく僅かの生徒に突き刺さるような視線は受けるものの、それ以外は何の問題も無い。





朔夜にとては暮らしやすい環境だ。






淡い笑みを浮かべて柚梨を見ると、彼女は嗚咽を漏らして涙を流しており、朔夜はぎょっとしてのけ反った。








「は、えぇ!? 柚梨? ごめっ……大丈夫!?」

「あれ? 柚ちゃん何で泣いてるのー?」

「もしかして、朔夜に泣かされたのー?」

「大丈夫?」








朔夜の声に重なるように、涙を流す柚梨を見つけた女子が二人を囲み冗談めかして彼女の肩を抱き寄せて朔夜に非難の視線を向ける。






彼女が泣くことはいつものことで、クラスメート達も朔夜が悪くないことは重々に承知していいるが、自分をからかうのを楽しんでいるのか柚梨が泣くのを見つけるたびにこうしてくるのだからたまったものじゃない。






どうやったら泣きやんでくれるだろうか、と頭を抱えて唸る朔夜の頭上から女子生徒の吹きだす声が聞こえた。






上を見ると目尻に涙を浮かべて笑っている女子生徒と目が合い、朔夜は半眼になりぷいっと少女から顔を背けると、再び少女は吹きだす。






「ごめっ……! ヤバッ。やっぱ朔夜からかうの超楽し……っ!」

「こっちは全然楽しくないから!」

「ゴメンって。朔夜ー。怒らないでっ。今度クレープ奢ってあげるから」







クレープ、と聞いて彼女の肩がぴくりと動く。






彼女の大好物は甘い物で、中でもクレープが大好物だ。





最近は金欠で食べることが出来なかったため、その単語がとても魅力的に聞こえた。





朔夜はちらりと上目遣いでいつの間にか彼女を囲んでいた女子たちを見る。








「……本当?」

「うん。本当。何ならアイス付きで」

「本当!?」







朔夜の瞳がこれ以上ないほどに輝く。






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