闇夜に真紅の薔薇の咲く
己の無力と“罪”を抱えながら、ずっと。

ルイは一度息をつくと、目を伏せる。そして再び目を開けた時、彼は周囲を囲んでいた黒づくめの者たちをも巻き込みながら、ノアールに襲いかかる者たちに銃弾を的確に撃ち込んだ。

大鎌を振り上げていたノアールは予想外のそれに驚き目を瞠ってこちらを振り向く。

普段よりも遥かに感情を見せる彼が何だかおかしくて、こみあげてくる笑みを必死に噛み殺しながらルイはその場には明かに不似合いなウィンクを一つすると、朔夜が消えた方向を指差した。


「行ってきなよ。早くしないとお姫様がキズものになっちゃうかもよ?」

「……。ありがとう」


あえてルイの言葉には触れず、ノアールは複雑な表情で礼を言うと朔夜の後を追って走って行く。

彼女の姿が見えなくなって数分。まだ、彼女は近くに居るはずだ。

ノアールの足ならば彼女がどうにかなる前にたどり着くことができる。

頭の中で簡単な計算をしながら、しつこくノアールに攻撃を仕掛ける黒づくめたちに向かって銃弾を打つ。



「ちょっとちょっと。君たちの相手はオレ、でしょ?」



おどけた口調とは裏腹に冷笑をたたえた彼は、一度銃をくるりと回した。







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