闇夜に真紅の薔薇の咲く
爽やかな笑みを浮かべて、彼は迷わず埃の舞う室内に足を踏み入れるとほうきを手に掃除をし始める。
そのあまりの早さに、断る暇もなく朔夜は呆気に取られて斗也を凝視した。
今日来たばかりの転校生。今朝の出来事から気にはしていたものの、話しをしたこともない。
放課後までずっと友人である麗たち四人と、そこに何故かいちいちくっついてきた死神二人と行動していたため当然この中の誰も彼と言葉を交わしたことはないはずだ。
つまり、斗也はこの中にいる誰もと初対面。
……にも関わらず、こんなにもあっさりと掃除を手伝ってくれるとは何と言う人物なのだろう。
僅かな疑問を胸に抱き小首をかしげ、今度こそ掃除をしようとほうきを握り直し地面に視線を落とすと不意に肩が叩かれた。
今度はなんだと、眉間にしわを寄せてあからさまに不機嫌な表情を作った朔夜がそちらを見ると、そこにはいつの間にか斗也が微笑をたたえており、慌てて表情を引っ込める。
「な、なぁに?」
急いで取り繕った笑みと共に、ぎこちない仕草で首をかしげると彼は「うん」とだけ言うと、おもむろに手をのばす。
反射的に身を反らした彼女に苦笑を零すと、斗也はツンツンと軽く自分の綺麗な黒髪を引っ張った。
「埃、ついてるよ」
「えっ。嘘、どこ?」
「えっと、ここらへん」
自分の髪で場所を示し、朔夜はそれを見て頭を押さえるけれど斗也は緩く首を振る。
それを数回重ね、流石に面倒になってきた彼女が適当に頭を押さえているといつまでたっても埃の場所を特定できなかったことに呆れたのか何なのか、驚くほど自然に近づいてくると朔夜の頭に手をのばし、にっこりと微笑を零した。
「ん。取れた」
「え。あ、あぁ。ありがとう……って、」
気づいたように目を瞠って、朔夜は一歩身を引く。
なぜなら、斗也の顔が思いのほか間近に迫ってきたからだった。
彼は驚いたように目を見開いたが、すぐに理由を理解し申し訳なさそうに眉をハの字に下げる。
「ごめん。近かったね」
「や、私こそなんか……ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「だって、身引いちゃったし……」
「それはボクが悪いんだよ」
ごめんね、と斗也が謝るものだから朔夜も謝ろうと頭を下げたその時、二人の間に割って入る影を認め朔夜は思わず顔をあげた。
顔をあげた先に映ったのは、不気味に頬が緩んでいる陽雫が両腕を伸ばしているところで、一体何をしているのかと不思議そうに目を瞬くと、彼女はしかめっ面を作る。
「――はい、ストーップ! 何だろう。このあっまい空気は!」
「……朔夜ばっかり、ずるい」
「ちょっと朔夜ちゃーん。オレにそんなに嫉妬してほしいの?」
「し、して欲しくないですけど……ッ! っていうか、ずるいって何。そもそも、甘い空気って!?」
何なんだろうか。この責められよう。
そのあまりの早さに、断る暇もなく朔夜は呆気に取られて斗也を凝視した。
今日来たばかりの転校生。今朝の出来事から気にはしていたものの、話しをしたこともない。
放課後までずっと友人である麗たち四人と、そこに何故かいちいちくっついてきた死神二人と行動していたため当然この中の誰も彼と言葉を交わしたことはないはずだ。
つまり、斗也はこの中にいる誰もと初対面。
……にも関わらず、こんなにもあっさりと掃除を手伝ってくれるとは何と言う人物なのだろう。
僅かな疑問を胸に抱き小首をかしげ、今度こそ掃除をしようとほうきを握り直し地面に視線を落とすと不意に肩が叩かれた。
今度はなんだと、眉間にしわを寄せてあからさまに不機嫌な表情を作った朔夜がそちらを見ると、そこにはいつの間にか斗也が微笑をたたえており、慌てて表情を引っ込める。
「な、なぁに?」
急いで取り繕った笑みと共に、ぎこちない仕草で首をかしげると彼は「うん」とだけ言うと、おもむろに手をのばす。
反射的に身を反らした彼女に苦笑を零すと、斗也はツンツンと軽く自分の綺麗な黒髪を引っ張った。
「埃、ついてるよ」
「えっ。嘘、どこ?」
「えっと、ここらへん」
自分の髪で場所を示し、朔夜はそれを見て頭を押さえるけれど斗也は緩く首を振る。
それを数回重ね、流石に面倒になってきた彼女が適当に頭を押さえているといつまでたっても埃の場所を特定できなかったことに呆れたのか何なのか、驚くほど自然に近づいてくると朔夜の頭に手をのばし、にっこりと微笑を零した。
「ん。取れた」
「え。あ、あぁ。ありがとう……って、」
気づいたように目を瞠って、朔夜は一歩身を引く。
なぜなら、斗也の顔が思いのほか間近に迫ってきたからだった。
彼は驚いたように目を見開いたが、すぐに理由を理解し申し訳なさそうに眉をハの字に下げる。
「ごめん。近かったね」
「や、私こそなんか……ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「だって、身引いちゃったし……」
「それはボクが悪いんだよ」
ごめんね、と斗也が謝るものだから朔夜も謝ろうと頭を下げたその時、二人の間に割って入る影を認め朔夜は思わず顔をあげた。
顔をあげた先に映ったのは、不気味に頬が緩んでいる陽雫が両腕を伸ばしているところで、一体何をしているのかと不思議そうに目を瞬くと、彼女はしかめっ面を作る。
「――はい、ストーップ! 何だろう。このあっまい空気は!」
「……朔夜ばっかり、ずるい」
「ちょっと朔夜ちゃーん。オレにそんなに嫉妬してほしいの?」
「し、して欲しくないですけど……ッ! っていうか、ずるいって何。そもそも、甘い空気って!?」
何なんだろうか。この責められよう。