闇夜に真紅の薔薇の咲く
「それが嫌だったら、ちゃんと手動かしてね!」

「……はーい」





ウィンクを一つして、鼻歌交じりに陽雫は掃除を再開する。



それをじと目で睨みつけながら、朔夜も仕方なくと言ったように深々とため息をつくとほうきを動かした。



それにしてもこの準備室。いつ頃から掃除をしていないのだろう。



埃っぽい室内をぐるりと見渡し、朔夜は僅かに眉根を寄せる。



天井の隅に張り付いた蜘蛛の巣に、埃が降り積もった資料の数々。



床にも埃が降り積もり、一度ほうきではいただけで大量の埃が舞い上がる。





「――ッ!」




無気力にほうきを動かしていた朔夜は、顔面に埃がかかり急いで窓の方へと駆けだすと、開いた窓から顔を出し、ひとしきりせき込むとうらめしげに舞い上がる埃を睨みつけた。



が、そこに運悪くいたノアールと視線がかちあい慌てて逸らす。



(ヤバい……。睨んじゃった……)



彼からしてみれば、訳も分からず睨まれてはかなり気分が悪いだろう。



怒っているだろうか、と恐る恐る背後を見やると彼は不思議そうに首を捻ると、何事も無く仕事を再開し始めているところだった。



予想外な反応に目を見開きつつ、怒っていなくて良かったと安堵の息を零し仕事を再開しようとしたその時。



突然、準備室の扉が勢いよく開かれた。






「――アレ? みんな何やってるの?」





燈色に染まった廊下を背景に、不思議そうに首をかしげたのは転校生の斗也である。



突然の彼の登場に、室内にいた誰もが一瞬そちらに目をやり固まったが、数秒後、麗の瞳の色がさっと変わった。



とろんと下がった目尻に、醸し出される雰囲気は明らかな好意。



室内は一気に麗の醸し出す雰囲気に満たされ、そこにいた斗也以外の誰もが深いため息をつく。



そんなことなど少しも気づいていない麗は、恥ずかしそうに上目遣いで斗也を見つめた。





「えーっと、準備室の掃除を……」

「そうなんだ。大変そうだね。ボクも手伝うよ」









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