夢現
携帯
彼女は彼を選ぶかどうか、とても迷っていた。
長い時間かけて、最終的に彼を選んだ。
彼は彼女の部屋に訪れた。
彼女は彼に触れ、彼を確認した。

彼女は彼を友人たちに紹介した。
友人たちは口を揃えて「羨ましい」と言った。
彼女がとても嬉しそうな顔をするので、彼も幸せな気持ちになっていた。

彼女は片時も彼を離さなかった。
時間があれば、いつも彼に触れていた。
彼は少しずつ、彼女の事を知っていった。
喜ぶ声、怒る声、哀しむ声、楽しげな声。
彼女の好きな音楽を奏でる事もあった。
一緒に旅行にも行き、一緒に眺めた風景を彼の記憶に留めた。

彼女の、彼に対する態度は短い時間で変わった。
彼女はすぐに彼を友人たちに紹介するのをやめた。
むしろ彼の存在を恥ずかしそうにするようになった。
彼は悲しいと思ったが、それを自分の言葉として伝える事ができなかった。

ある日彼女は決断する。
彼と一緒にある場所に行く。
彼女は長い時間迷った結果、選んだ。
そして彼からこれまでの記憶を抜き取った。
彼はただの塊になった。
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