とあるうさぎのお話。
死なない、死ねないこうさぎは一人、虚しさを抱えて生き続けて、数年、数十年経ちました。
ある日こうさぎが森でお散歩をしているとき、大きな素敵な木を見つけました。
「わぁ、素敵な木だなあ。暖かいし、少しお昼寝していこうかな」
そしてこうさぎが腰かけた途端、それを待っていたかのように、ぽっかりと幹に穴が開いて、こうさぎは吸い込まれるように穴へ落ちていきました。
―――どすん!!
「え……あ、れ?」
あまりにもいきなりで、叫ぶ事もできなかったこうさぎは放心状態で暫く座り込みます。
「ここは、どこだろう」
ふと上を見上げると、はるか上の方にぽっかり開いた穴があります。
「痛いなぁ……。」
どうやら木の葉がクッションになり、大怪我はしなかったみたいですが、それでも落ちてきた衝撃でお尻がじんじんと痛みます。
「……あ、ドアがある」
キョロキョロと周りを見渡していたこうさぎは、小さなドアを見つけました。
小さいといっても、こうさぎが通るには丁度良さそうなドアです。
「……ボーッとしててもつまらないし、行ってみようかな」