とあるうさぎのお話。
「こうさぎが死ななければ、いつまでも誰かと一緒に居られるでしょう?……ねぇ、こうさぎ。もうそれでいいでしょう?おかあさんはもう行くからね」
「まって!そんなの嫌だよおかあさん!」
こうさぎを抱き締めていた体が、腕が、体温がだんだん薄れ、消えていきます。
「やだっ!まっておかあさん!いかないで!僕を一人にしないで!おかあさん!」
こうさぎは何度も何度も叫びます。力の限り、何回も何回も悲痛な叫びを響かせます。
しかし、そんなこうさぎの必死の懇願も空しく、おかあさんは消えてしまいました。
後に残されたのは、自分の腕に微かに残る温もりと、不死身の哀れなこうさぎ。
こうさぎが俯くと、小さな瞳に溢れた涙がパタパタとこぼれ落ち、地面に染みを作りました。