ダブルスウィッチ
シン……と静まり返るリビング。

ここまで言っても亮介の口からは言い訳さえ出てこない。

彩子の悲痛な叫びを、彼女に変わって伝えたつもりだったけれど、やはり彼の心が動くことはないんだろうか?

ただの冷血漢じゃないってことを知ってるだけにえみりは歯痒かった。

本当は優しい人なのにという思いが、諦めることを拒んでる。



「愛されたかった……だと?」



そうポツリと漏らした亮介の目は、明らかに動揺していて泳いだままだ。



「……愛なんて最初からなかったはずだろ?

これは契約結婚で、お互いの利害が一致したから一緒になったんじゃないのか?」



心底困惑したような亮介の言葉に、今までのことが全て府に落ちたような気がえみりはしていた。

愛だの恋だのと、そんなことは最初から亮介の中では省かれていたのだ。

お互い、いい歳まで独身だっただけに、見栄のためや出世のため、それを満たす契約。

彩子がそこにサインした時点で、もうそこには愛など育つはずもなく……

いつか頑張って彼を支えていれば愛してくれるかもしれないなどと思っていた彩子の微かな願いなど届くはずもなかったのだ。

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