ダブルスウィッチ
黙って聞いていた亮介の瞳が少しだけ揺れた気がした。


彩子の気持ちが少しでも伝わってほしい。


そんな願いを込めて、えみりは亮介が口を開くのを待った。


「……悪い

彩子の気持ちは……よくわかった

……でも、まだ頭が整理できてないというか……

お前も俺と同じように割りきってると思ってたから……

だけど……うん、ちゃんと考えるよ

俺は元々離婚は望んじゃいない

だからこれから彩子と普通の結婚生活が出来るように、ちゃんと考える

だから、もう少しだけ待ってくれないか?

時間が欲しい……」


精一杯考えて出した答えなのだろう。


亮介が初めて前向きに答えを出してくれた瞬間だった。


きっとえみりとのこともきっちり精算するつもりなのかもしれない。


少しだけ寂しかったけれど、自分の夢を応援してくれていることがわかっただけで、えみりはもう充分だった。


「わかったわ……ちゃんと考えてくれるって言ってくれて嬉しかった

ありがとう」


自分の役目は終わった。


えみりは心の中でそう思いながら、これが亮介との最後かもしれないと、二人分の様々な思いを抱えて、細く長く息を吐き出した。


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