ダブルスウィッチ
「鈴村さん、さっきの報告書、もう出来てる?」
「あ、はい!出来上がってます」
「ほんと?いやぁ、助かるよ
最近の鈴村さんの仕事ぶり、評価高いよ?
契約も延長してほしいって上にも言ってあるから、これからも頑張って」
「は、はい!ありがとうございます」
部長がその場を離れると、彩子は小さくため息をついた。
久しぶりに社会に出たことで働くのが楽しくてつい張り切ってしまったけれど、元に戻った時のことを考えるとあまり余計なことはしない方がいいのかもしれないと彩子は思う。
えみりが派遣として働いているのは、歌手を目指している彼女にとって都合がいいからだと彩子は聞いていた。
だから適当に失敗なく過ごせればそれでいいのだと。
契約延長などえみりは望んじゃいないのだ。
「はぁ……」
もう一度ため息をつくと、彩子は席をたった。
カフェスペースでコーヒーを淹れて、少し休憩することにする。
ぼんやりと昨日のことを思い出して、彩子は小さく笑った。
(いい子だったな……)