ダブルスウィッチ
夜通し話をしていれば、えみりがどんな子なのかだいたい想像がつく。


純粋で駆け引きなど知らない真っ直ぐな女性だった。


亮介が好きになるのも無理はないかもしれないと彩子は思う。


えみりは身を引くと言ったけれど、果たして亮介が手放すのか、それも疑問だった。


昨日えみりに聞いた亮介は、まるで別人だったからだ。


彩子には見せたことのない顔を、えみりには見せている。


それは彩子自身も嫌というほど思い知ったことだった。


亮介がえみりに触れる指先も唇も、彩子が10年一緒にいて一度も体験できなかったものだったのだ。


あれほど焦がれた亮介の愛を、彩子はえみりの身体で感じなきゃならなかった。


(なんて残酷なんだろう……)


愛されない彩子が亮介との生活に拘り、愛されているえみりは身を引くと言う。


それを亮介が望んでいないかもしれないのに。


3ヶ月――


彩子はえみりにそう言った。


でもすでに彩子の心は決まっていた。


えみりに体を返そう、と。


彩子と亮介の夫婦関係を何とかすると言ってくれたえみり。


でもそれは本来なら彩子自身がやらなくてはならなかったことだ。


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