ダブルスウィッチ
世界が狭くなっていたのかもしれないと彩子は思う。


10年間、亮介の世話だけをしてきた彩子には、それ以外の何かを見る余裕もなかった。


結婚する前となんら変わらない日常。


不満ばかりを抱いて、自分から動くことはしなかった。


誰かのせいにする前に自分を改めるべきだったのだ。


(あの子に教えられたかな?)


えみりの必死な顔を思い出して彩子はクスッと笑った。


彩子のために泣いて憤ってくれたえみりのためにも、強くならなきゃならない。


えみりの夢を潰すわけにはいかないのだ。


(夢……か……

自分に夢はあっただろうか?)


料理に着付けに英会話。


幼い頃からやらされてきたものは、いつの間にか身に付いていたけれど、彩子がやりたくてやっていたわけじゃない。


それがたまたま亮介の役にたっただけのことだ。


けれど嫌いでやっていたわけでもない。


それらを生かした仕事が出来たらという思いが、入れ替わってから彩子の中に芽生えつつあった。


元の体に戻ったら、まずは亮介にそれを伝えようと。


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