ダブルスウィッチ
今まで不満に思いながらも亮介の言いなりになってさえいればいつか愛してもらえると思っていた彩子自身が破らなきゃならない殻。


それに彩子は知っていた。


3ヶ月後、えみりがライブハウスで歌う予定があることを。


練習だってあるはずなのに、敢えて彩子の申し出をえみりは受け入れていた。


まるでそれが償いだとでも言うように……。


今まで彩子はえみりさえいなければ亮介を取り戻せると思っていた。


でもそれは違うのだと、えみりになってみて彩子は気づいたのだ。


えみりがいようがいまいが、亮介が彩子を愛さないのは、彩子自身に問題があるんだということに。


コーヒーを飲み終えて一息つくと、彩子はまた自分の席へ戻った。


やりすぎない程度に仕事を片付ける。


えみりの体を借りてみて、わかったことがもうひとつある。


結婚する前は嫌で仕方なかった仕事が、楽しく思えてるってことだ。


あの頃は周りがどんどん結婚して焦っていたせいか、仕事を楽しいと感じる余裕がなかったのかもしれない。


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