ダブルスウィッチ
「彩子さんていい人ですよね?

旦那の浮気相手の心配までするなんて……

いい人すぎますよ?」


えみりはそう言って静かに目を伏せた。


そんなえみりを見て彩子はフッと笑みをこぼす。


「あなたこそ……

彼に何か言ってくれたんでしょう?

騙して入れ替わらせた私なんかのために……

あなたの方がよっぽどお人好しだと思うけど」


クスッと彩子が笑うと、えみりもまたクスクス笑い始めた。


「なんだか妻と愛人の会話とは思えないですね?」


「確かにそうね?フフッ……なんだかお互いが入れ替わってるせいか、相手の気持ちになっちゃってる気がするわ」


握っていたえみりの手を離しながら、彩子はそう言ってまた一口紅茶を飲んだ。


えみりもまた手持ちぶさたなのか、目の前にあるアイスティのストローでガシガシと氷を沈めている。


その手を見つめながら、彩子は自分の手と無意識に見比べていた。


若いえみりに比べて、彩子の体はずいぶんと衰えている。


完璧な体に嫉妬しない女などいないに違いないけれど、彩子はそんな衰えた自分の体が懐かしかった。


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