ダブルスウィッチ



安っぽいソファーベッドに横たわりながら、彩子はそっと目を閉じる。

次に目が覚めたときには、きっと元に戻っているはずだ。

亮介は真っ直ぐに家に帰っただろうか?と彩子は思う。

えみりから別れを告げるはずだったのに、意外にも先に口にしたのは亮介だった。

そこには少なくとも彩子との夫婦関係を修復しようという気持ちがあるように見えた。

えみりが何をどう亮介に伝えたのかはわからない。

でも、彼女の好意を無駄にしないためにも、自分も変わらなければと彩子は決意する。

今までのようにただ囚われた籠の中の鳥じゃダメなのだ。

自分の意見をきちんと伝えられるような、そんな対等な夫婦関係にしていかなければ意味はない。

実際、もう壊れていたのだ。

元の生活にただ戻るだけでは、えみりと入れ替わってまで亮介に愛されたいと思った自分が無駄になる。

例え、仕事上のパートナーとしてしか見られていなくても、女として愛されていなくても、亮介が必要としてくれるのなら……

そんな思いが、彩子を支配していた。

仕事なのだと思えばいい。

完璧な妻、完璧なサポートで、彼を出世に導くのが自分の仕事なのだと。

いまさら、抱かれたいと彩子は思わなかった。

もう年齢的にも子供は望めない。

彩子は思い出していた。

えみりとして抱かれたときのことを……

自分があんな風に抱かれるなど想像できなかった。

だったら、いっそ亮介とは結ばれない方がいい。

新たな決意を胸に、彩子は不意に訪れた睡魔をあっさりと受け入れ深い眠りに落ちた。





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