ダブルスウィッチ
待つつもりでいた返信は、意外にもすぐにやってきた。


既婚者だということは、あのカフェでとっくに知っていたから、夜は返信が来ないものと勝手に思い込んでいた。


左の薬指に光るプラチナの輝きは眩しすぎて直視できなかったような気がする。


それでも会いたいと思わせる何かを、彼は持っていたんだとえみりは思っていた。


(明後日の夜はいかがですか?)


そんな返信に、ドキッとするのは、えみりがもうすでに彼を気に入っている証拠でもある。


(もちろん大丈夫です
時間は森野さんに合わせますから、決めてください)


森野さんと打つだけで、えみりの心はキュンとなる。


彼は浮気するタイプなのか?とか、そもそもこれは浮気になるのか?など、考え出したらきりがない。


(7時にこの間のカフェで)


短い文章が、さらにえみりの想像をかきたてた。


お礼なのだから、えみりがそのあとのことは考えなくてはならない。


彼との夜を想像して、体が熱くなるのがわかった。


もちろん、彼がそんな誘いに応じるはずもないけれど、えみりは少しだけ期待していた。

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