ダブルスウィッチ
過程はどうあれ、子供を授かるということは、彩子の長年の夢でもあった。


産まない選択などあり得ない。


ずっと孤独だった彩子にとって、自分が初めて一人じゃないんだと感じる瞬間だ。


卑屈だった自分に、どんどん勇気が湧いてくる。


この子のためにできること。この子のためにしなきゃいけないこと。


いろんな思いが頭をめぐり、最終的にたどり着いたのは、今ある現状の打破だった。


彩子は決心する。まだ小さなお腹の命に誓いを立てて、これから実行に移す様々なことを。



その日の夜、彩子は亮介に妊娠の事実を伝えた。


驚いたように目を見開いたものの、次の瞬間にはフッと表情を崩して、そうか……と亮介は少しだけ微笑んだ。


彩子は確信する。


亮介にとって、それはあながちなくもないことだったんだと。


妊娠に至る行為が、彩子との間にあったんだと。


自分に身に覚えのない妊娠が語るものなど一つしかない。


えみりが彩子でいるときに結ばれたものだ。


それを確信したとき、彩子の中で何かがパチンと弾けた。



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