ダブルスウィッチ



「全部、読んでもらえる?

……それからそれを受け入れてもらえるなら……サインしてほしいの」



それは遠い昔、彩子が亮介に言われたのと同じセリフ。


あの時の自分は、藁にもすがる思いで亮介の申し出を受け入れた。


もう後がなかった彩子の、苦渋の決断。


亮介はどうでるだろうか?


イエスなのか、ノーなのかそれは彩子の賭けでもあった。


もし、受け入れられなければ、もっとも辛い選択を彩子はしなければならない。



亮介はしばらくそのまま書類を握りしめて、彩子を睨むように見つめていたが、やがて諦めたように目を落とし長く大きなため息をついた。


それから、おもむろに手にしていた紙のページを捲り中身を確かめるように読み始めた。


パラパラと紙を捲る音だけが響く。


それほど多くない枚数なだけに、すぐにそれは元の状態に戻された。


亮介が顔を上げ彩子の顔を見る。


その表情からはどんな答えを出すのか読み取れない。


彩子もまた不安を抱えながらも、亮介の顔をじっと見つめ返して彼が口を開くのを待った。









< 266 / 273 >

この作品をシェア

pagetop