ダブルスウィッチ
しばらく携帯を見つめていると、ふいに点滅する光。


そんなわけはないのに、亮介の妻が折り返してきたのではないかと、携帯を取り落としそうになるほどえみりは動揺していた。


見るとそれは亮介からのメールで、ホッとしたのもつかの間、すぐにえみりの顔には不安の色が宿る。


彼女は亮介に言っただろうか?


ピアスの存在を……


だとしたら、圧倒的に不利なのはえみりの方だ。


めんどくさいのは嫌だと亮介は言った。


妻とは別れるつもりはないとも……


ルールを破ったえみりをあっさり捨てることは、亮介には簡単なように思えた。


元々えみりから迫った関係だ。


あんなに愛してくれているけれど、それはもしかしたらえみりじゃなくてもいいのかもしれない。


彼女の揺るぎない妻という立場。


亮介にとって、変わらないのはその事実だけ。


えみりは降ってわいたおまけみたいなものだった。


自分の行動が、自分の首を絞めたんだということに、えみりはこのときようやく気づいた。


ゴクリと唾を呑み込みながら、亮介からのメールを震える指で開く。


< 67 / 273 >

この作品をシェア

pagetop