イケメンSPに守られることになったんですが。
ニット帽に、メガネにマスク。
普通によくある黒のダウンジャケット。
そのポケットに入れられていた手が、抜き出され……。
「麻耶さんっ!!」
そこに銀色の光が見えたと思った刹那、亮司さんの声が聞こえ。
次の瞬間には、彼の腕が私を後から抱いて、数歩下がった。
今まで私がいた空間に、一筋の光が走る。
それがなぎ払われたナイフだと気づくのに、時間はかからなかった。
襲撃だ……!
買い物客の悲鳴が耳に届いたと同時に、亮司さんは私を抱いたまま、長い足でレジ脇の買い物カゴが乗った台車を男の方へ蹴り飛ばす。
意外な速さを持ったそれは、男の足を直撃した。
男の体に当たり、買い物カゴがいくつかふっとび、コン、ゴン、と床にマヌケな音を立てる。
「こちら高浜!襲撃だ!
一般人の誘導と、マルタイ安全確保の応援を頼む!」
男がうずくまっているうちに、コートの襟に隠してあったマイクにそう話すと、亮司さんは大声を張りあげた。
「警察です!!従業員の皆さん、買い物客の皆さんを誘導して店舗の外へ避難してください!!」
って、いきなり言われても。
って顔で固まる、レジのおばちゃんたち。
とにかく、ナイフを持った不審者がいるのは間違いない。
サービスカウンターにいた従業員が、受話器を取って、店内放送で呼びかける。