イケメンSPに守られることになったんですが。
「中園さん、もしかしてマルタイさんですか?」
「えっ」
思わぬ単語が、丁寧に口紅とグロスが塗られた唇から滑り落ちた。
「顔を隠したいみたいだから、誰かに狙われてるのかなって。
亮司が車でずっと待ってるのも不自然だし」
……亮司さんがSPだって知ってるんだ。
この人、やっぱり……。
私はうなずいて、聞き返した。
「はい、私は高浜さんの警護対象者です。
佐々木さんはもしかして、高浜さんの……元婚約者さん、ですか」
「えっやだ、あいつマルタイさんに身の上話なんかしてるんですか?
いやらしいやつー」
はい、ビンゴー!!
うわー、へこむなー……。
佐々木さんは私より5歳は年上だろうけど、お肌の輝きからして違う。
共通しているのは、『ヒトの女』ということだけだ。
同じ人種とは思えない……。
そうですか、こんな綺麗な人に逃げられたんですか。かわいそうですね。
そして私には全く脈ナシだ。
こんな人に勝てる気がしない。
たとえ、すでに思い出になっているとしても。
この人の残像にさえ、勝てる気がしない。
「……まずカラーリングしていきましょうか」
テンションが地にめり込むくらい下がってしまった私は、もう全てを佐々木さんに丸投げした。もうどうにでもなれだ。
……ああ、惨めだ。
いっそ坊主にでもしてくれ。出家したらテロリストも追ってこないかもしれぬ……。