イケメンSPに守られることになったんですが。
「じゃあ、少し置きますね」
薬剤を塗り終わった佐々木さんが、ゴム手袋をはずしながら言う。
イケメンアシスタントさんが、すかさず雑誌とコーヒーを持ってきてくれた。
たまにはファッション誌でも見てみようか……と手を伸ばすと、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
「中園さん、ちょっといいですか?」
「はい?」
気づいたら、佐々木さんが真横にいた。
おうっ、なんていいにおいがするんだ!カラー液の刺激臭を凌駕しているじゃないか。
「余計なことだと思いますけど……中園さん、もしかして、亮司のこと好きですか?」
「はぁっ!?何言って……」
「だって、さっき私の素性を知ってから、ずっと泣きそうな顔してるもの」
「…………」
それならなんで放っておいてくれないの。
八つ当たりしたい気持ちを抑えて、ただうつむく。
「安心してください。
私とあの人はもう、何の関係もありませんから」
アシスタントに聞こえないように、佐々木さんは小声で話す。
「……そう、ですか……」
カラー液を塗られ、耳にカバーをつけられたマヌケな私と綺麗な佐々木さんが同じ鏡に映るのが直視できない。
メガネを取られてるから、ぼやけて見えないけど、同じフレームに収まりたくない。
あなたはもうどうとも思ってないかもしれないけど、亮司さんは違うかもしれないじゃない。
どうしてわざわざ、佐々木さんのところに私を連れてきたの?
私をダシにして、彼女に会いたかったんじゃないの?
一度胸にひっかかってしまった蜘蛛の糸はからまるばかりで、なかなか解けてくれない。