イケメンSPに守られることになったんですが。


トイレには、他には誰もいなかった。


よかった、混んでいなくて。


先に入った女の人は、化粧直しが目的だったのか、個室に入らずに洗面台の前にいる。


私はその人を避け、個室に入ろうとした……その瞬間。



「……っ!!」



……見てしまった。


鏡に映った、その人の顔を。


タレ目の、血色の悪いその顔を……。



「カズ……ッ」



名前を呼ぶ前に、その人物は振り向きざまに私の口を大きな手のひらでふさぐ。


そして私の背後に回り、「静かにしろ」と耳元でささやいた。


その手には、いつの間にかナイフが握られている。


彼女かと思ったけど実は女装した男だった彼は、私ののどにナイフを突きつけたまま、掃除道具入れから『清掃中』と書かれた看板を出し、トイレの入り口に乱暴に置いた。





「これで誰も入って来られねえぜ。

久しぶりだな……麻耶」





ナイフを突きつけたまま、私を個室に連れ込んで鍵をかけたのは……。


もう二度と会わないと思っていた人。


私の大事なものを、たくさん奪っていった人。


カズヤだった。




< 207 / 438 >

この作品をシェア

pagetop