イケメンSPに守られることになったんですが。


そう……笑ってたよね。


そんな頃もあった。


あたしたちは、今はこうなってしまったけど……。


お互いを愛しいと思っていた時期が、たしかにあったよね。


人から見ればくだらないし、誕生日を忘れた償いにそれだけしかしてもらえなかったなんて、と笑われてしまうかもしれない。


でも私は……すごく嬉しかったんだよ、和也。


迷わずそのビルにつくと、また電話がかかってきた。



『よく覚えてたな……正解』


「…………」



私も、あんたが覚えてくれているなんて思わなかったよ……。



『悪いな、今日はケーキを食べてる時間はない。

そのまま、階段を使って3階へ上がれ』



指示通り、大西さんと階段を上がる。


途中で通った2階には、もうあのカフェはなかった。


代わりに、なんだかいかがわしげな『セクシーランジェリーショップ』と書かれたお店に変わっていた。


一抹の寂しさを覚えながら、3階につくと……。


そこには、『貸し店舗』と書かれた張り紙のしてある錆びれたドアがあった。





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