地方見聞録~人魚伝説譚~
もとは我等はこの地域付近に住む人魚であったと、オーズが言う。
そして付近に移り住むようになると、少しずつだが海の中では他の所の人魚も出入りするようになった。
何だか、現実味がなかった。
「つい最近まで人魚は昔話だけっていう感じだったのに
「だが、ほら」
岩場に座る私の隣に、人魚姿のヨウが並び「ちゃんと尾鰭があるぞ?」と動かして海面を揺らす。
村が完全に元に戻ったら、リンとセインの婚礼が待っている。それにむけての準備も始まっていた。
私は、船の上で刺された。
助けにきてくれた、そして戻ってきてくれたヨウに泣きそうになった時、彼に傷はないかと確認した。
刃は彼まで届かず、私だけを刺したことに、心からよかったと思った。ヨウが無事ならば良いと。