地方見聞録~人魚伝説譚~
死ぬ覚悟であった、
だが本音は怖くて、顔を歪ませるヨウに、少しでもそんな顔をさせたくなかった。
私のために涙なんて流さないで。悲しまないで。早く逃げて――――。
でも彼は私を村まで連れてきてそして―――私は助かった。
「あの時ね、声がしたの」
「声?」
「"俺は彼女を悲しませたが―――どうか君は幸せに"って」
「それは……」
村に残る人間の青年と人魚の娘の話の、娘はヨウの先祖なのだと聞いた。
「運命なのかも知れぬな」と私にオーズが言った通りなのかもしれない。なら、私はそんな先祖に助けられたことになる。