地方見聞録~人魚伝説譚~
レトがリンに呼ばれ岩場を後にしたころ。
己も戻るか、と立ち上がろうとした時だ。
「ヨウ―――――」
"声"には覚えてがあった。しかしそれをまさか、ここで聞くことになるとは考えてもいない。
ここは人魚が姿を見せない地域だからだ。
海面からゆっくり近づいたその姿に、酷く驚く「ハレン、か?」
「っ君という奴は!僕がどれだけ心配したと思ってるんだ!」
金の髪を結い、そして背には弓を。久しぶりに見る友人の姿に一瞬言葉を失った。
いつもは女に負けない程、見た目にこだわる男が武装をし、そして疲労の色を濃く残していた。それでも声を張り上げたのだ。
君は、とハレンが話そうと口を開くまえに、場所を少々移動する。
岩場でも影となっている所だ。そして先に小声で、と言えば呆れながらも頷く。