地方見聞録~人魚伝説譚~






 レトがリンに呼ばれ岩場を後にしたころ。

 己も戻るか、と立ち上がろうとした時だ。






「ヨウ―――――」






 "声"には覚えてがあった。しかしそれをまさか、ここで聞くことになるとは考えてもいない。
 ここは人魚が姿を見せない地域だからだ。


 海面からゆっくり近づいたその姿に、酷く驚く「ハレン、か?」






「っ君という奴は!僕がどれだけ心配したと思ってるんだ!」





 金の髪を結い、そして背には弓を。久しぶりに見る友人の姿に一瞬言葉を失った。
 いつもは女に負けない程、見た目にこだわる男が武装をし、そして疲労の色を濃く残していた。それでも声を張り上げたのだ。



 君は、とハレンが話そうと口を開くまえに、場所を少々移動する。
 岩場でも影となっている所だ。そして先に小声で、と言えば呆れながらも頷く。







< 66 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop