わたくし、政略結婚いたします!?
「……ウィル」
「やっぱり、覚えていないみたいだね」
ウィルは私の言葉を遮って、よく通る声でそう言った。
その声に含まれた、相変わらず優し気な響きに。
……どうしてか、恐怖を覚えた。
「僕、アリア嬢とは昔会っているんだよ」
「……え?」
思いがけない言葉に、驚きを隠せず間の抜けた声が出た。
……昔、ウィルに会っている?
そんな記憶、ないけど……。
戸惑ったままの私を尻目に、ウィルは言葉を続ける。
「僕だけじゃない。……レナルドも、だ」
その言葉に。
自分の目が驚愕に大きく見開かれたのが分かった。
レナルドと、会ったことがある…?
……嘘よ。
そんなこと、レナルドは一言も言ってなかった。