わたくし、政略結婚いたします!?



「……ウィル」


「やっぱり、覚えていないみたいだね」


ウィルは私の言葉を遮って、よく通る声でそう言った。


その声に含まれた、相変わらず優し気な響きに。




……どうしてか、恐怖を覚えた。



「僕、アリア嬢とは昔会っているんだよ」



「……え?」



思いがけない言葉に、驚きを隠せず間の抜けた声が出た。


……昔、ウィルに会っている?


そんな記憶、ないけど……。



戸惑ったままの私を尻目に、ウィルは言葉を続ける。




「僕だけじゃない。……レナルドも、だ」




その言葉に。


自分の目が驚愕に大きく見開かれたのが分かった。



レナルドと、会ったことがある…?




……嘘よ。


そんなこと、レナルドは一言も言ってなかった。

< 161 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop