わたくし、政略結婚いたします!?
「アリア様、そろそろお時間です」
侍女のメグがノックと共に部屋に入ってきて、そう告げた。
この屋敷に来た初日から私の世話をしてくれているメグ。
金色のまっすぐな長い髪をいつも一つに束ねていて、愛らしい大きな瞳が印象的。
私よりひとつ年下の16歳で、いつもニコニコ笑っている。
この屋敷に来て、何か一つでも心が休まるものがあるかと言われれば、彼女の存在だ。
こんな、没落貴族の娘にも笑顔を向けてくれる。
仕事だということは分かっているが、それでも、嬉しかった。
「今行くわ」
私は椅子から立ち上がって、メグの元に向かう。
毎日、私には多くの授業が義務付けられていた。
…授業、という言葉が正しいのかはわからないが。
10歳から働くばかりでまともな勉強もしていなかったから、学ぶべきところは多かった。
さすがに読み書きや簡単な計算ならできる。
10歳までの父の熱心な教育で、積み重ねてきたものもある。
けれど、社交界デビューもしていない私にとって、一番厄介なのはマナーや上流階級の常識に関することだった。