Sion




だから、希愛の傍にいるのだと希愛自身も感じていた。
それでもよかった。律花は自分の心に従っているのだから。




律花に他に友人ができたとしても、希愛は怒りはしない。
律花は律花の心に従ったのだ。
希愛よりも仲良くしたいという子ができただけ。




少し悲しくなっても、希愛は何も言わない。
一人でいることを希愛は望んでいた。
律花といるのは律花がそう望んでいるからだった。




『律花、そろそろ離して。教室にいかないと』




希愛がそう手話で話すと、律花は思い出したようにぱっと腕を離す。




「そうだったね。でも、その前に桜見にいかない?ここの桜って凄く綺麗なんだよ」




希愛は時計に目を向ける。
時間はまだまだあった。余裕があり、少しぐらいならいいだろう。




希愛は笑顔で頷いた。
すると、律花は希愛の手を握り、その場所へと先導していった。





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