メインクーンはじゃがいもですか?
「で、将ちゃん、大勝ちしたんだってねえ?」
何も言ってないのになんでそんなことが分かるんだろうか。
「この時間にここに来てこれを頼む時は、大勝ちのときしかないだろう? あんたが昼間っからここに来るのはその理由さ。だろ?」
優しそうなママはそんなことを言いながらオリジナルのなんだかよく分からない丼を運んできた。
「験担ぎ(げんかつぎ)だな」
ほれ食えと箸を渡された葵は、言われる通りに箸を手に持ち、丼と向かい合う。
「で、このお嬢さんは何、将ちゃんの女かい?」
霧吹の隣に座ってビールをひっかけるママは、やはりその手の人なんだとうすうす実感する。小指を立てて『女かい?』というくらいだ。その道ってことだろう。
「何言ってんだよ。こんなガキ相手にしねーっつんだよ」
「ガキで悪かったですね。ふん」
むかっときた葵は言い返して丼をかっこんだ。
「あーそうかい、ははは、お嬢ちゃん、あんたも大変な男を好きになっちゃったねぇ」
酒を飲みながら葵にウィンクするママは、若い頃はぶいぶい言わせていたに違いない。
目が生き生きしていたし、年はとっても目の輝きは光を増してた。そして酸いも甘いも知り尽くしてる感が半端ない。
「好きじゃないですし」
「ああ、そうかい。将ちゃんは大変だよ」
「だから違いますってば!」
「分かった分かった」
手を上げて『はい、終わり』とばかりにひらひらさせた。