メインクーンはじゃがいもですか?
案の定酔っ払ってドラ猫に変わった葵は手が付けられなかった。
ママはそんな葵が気に入り、どんどん飲ませ、失態をぶっかます葵で大いに遊んでいた。
霧吹は時間を見て、自宅にいる次郎を呼び出し、半ば強引にこのドラ猫を車に押し込んでしまおうと考えた。
ママだけは葵がリピートする「例の言葉」を聞いて、すこぶる楽しそうに、葵をけしかけては大笑いしてたけど、霧吹と霧吹の連絡を受けて急いで駆けつけてきた次郎は勘弁極まりないという顔を、これでもか! という程に全面に押し出した。
次郎がいつもの無駄に長いリムジンを運転し、ついでやってきた三郎が霧吹が乗ってきた車を運転して帰ることになった。
「ねー、将ちゃん、もう少しこの子で遊ぼうよー。こんな面白いの見たことないし」
「やめてくれよ。こいつはこれからがめんどくせーんんだから」
「そーっすよ、ほんとなんでこんなに飲ませたんすか」
「次郎も乗り気じゃなーい、つまんなーい」
次郎はへいへいとママをいなす。
葵の絡みは車に乗ってまでも続行していて、うっとうしそうにかわす霧吹はこいつをフルボりたいとうっすら思った。
「霧吹さん! やっぱり私と一緒に付き合いましょうって! きっとそれが一番合うと思います! 私たちは~、きっと~似合うっ! たぶん」
「なんだそのへんてこな歌は。次郎、さっさと飛ばして帰れ。めんどくせー」
「はい。もちろん」
なんの根拠があるのか、葵しか知らないその理由。酔っ払った時からずっと言い続けている例の言葉とはこのことだ。
かっ飛ばす葵に誰一人ついていくいことが出来ない。かろうじて相手にしているのはママだけだ。
こいつを修に押しつけてしまいたい衝動に駆られている霧吹は、スナック赤パンツでスイッチが入ってからというもの、この葵の愛の告白攻撃を永遠に聞かされていた。
「無理」
これしか言わない霧吹の言葉は、葵の耳には届いていない。
まとわりつく葵をなんとか自分からひっぺがし、行け! と命令する霧吹は、それでもにゃんにゃんと絡みつく酔っ払った子猫な葵を、そろそろフルボッコにしたい衝動にかられた。
「お前は本当にうっとうしいな!」
葵の頭を手で押しやり、遠ざける。遠ざけるには十二分に広さのある車内。
なんでそんな冷たい事を~!
ぶーぶー言う葵を無視すること数分、すっと力が抜け、葵がおとなしくなった。