契約彼氏-ニセ彼氏-
私が電話を切ると和樹も煙草をにじり消して歩いて来る。
玄関の自動ドアが開いた瞬間、春の風が吹き込んできて、私の頬を撫でていった。
「―それで?」
自信のある顔だ。私はちょっぴりシャクだけど言った。
「あなたにします。……じゃあ、これ」
仰々しく封筒を差し出す。中には5時間分のチャージ、2万5千円が入っている。
男にお金を渡すなんて惨めな気持ちかなと思ったけど、意外とそうでもなかった。
そうか、お金を払うって相手を縛ること、支配することなのか。
一方、和樹は別に感謝する風でもなく、軽く中身を確かめると「確かに」と言って無造作に封筒をポケットに押し込んだ。
「……で、これからどうする?」
見つめられて私はドギマギする。いきなり「部屋とってありますから」とは、さすがに言えない。
「とりあえず、お茶……?」
私が言うと、和樹は「了解」と涼しい笑顔で答えた。