契約彼氏-ニセ彼氏-
「やっぱりぃ、ヤダぁ、すごい偶然! あたしたち、買い物の帰り。ほら、例のシゲタの結婚祝い」
駆け寄ってきた理沙は一気にそこまでしゃべると、初めて和樹に気付いたように「あ、どうもぉ」と甘ったるい挨拶をした。
和樹は笑顔で答えると、「友達?」と私に視線を送る。
私が答える前に一瞬早く理沙が会話を引き取った。
「同級生です。トモは途中で転校しちゃったけど、今も仲良しで。……あ、今日はみんなでお買い物。疲れたからお茶しようと思ったんだけど、席、空いてなくて」
理沙の目は私と和樹の間にある空席に注がれている。
いかにも座りたげな理沙に瀬戸君が後ろから声をかけた。
「三宅、ほか行こう」
「えー、何でぇ? すぐ空くって言ってたじゃん」
「いいから。ノブがいい店知ってるって言うから。ほら」
2人が揉めているとウェイトレスがやって来て「あちら、一席だけ空きましたけど?」と4人掛けの席を示す。