契約彼氏-ニセ彼氏-
ロビーへ行ってトイレへ駆け込む。
洗面台のブースにはそれらしきものはない。
「個室」には3人ほどの行列ができていた。
それを追い越して、さっき入った1番奥のブースをノックする。
「すみませーん、そこにホテルの鍵、落ちてませんかー?」
恥ずかしい行為なのは良く分かっている。
背中に皆の冷たい視線を感じる。だけど今は気にしてられない。
個室からの返事はなかった。
「すみません!」再びノックする。
……と、おもむろにドアが開き、髪の長い女のひとが出てきた。
彼女は冷たい一瞥をくれると去って行く。
私は飛び込んで素早く辺りを見回した。
便器の下も汚物入れの後ろも探してみたけど見つからない。
女の吸った煙草の残り香が私の胸を悪くさせた。