契約彼氏-ニセ彼氏-

杖は大理石の床を滑って向こうまで飛んでいた。

その杖を拾う手。

骨ばった大きな手。

私は痺れたように体が動かせなかった。

和樹がそこにはいる。

理沙や瀬戸君たちも一緒だ。

こんな無様な姿を皆に見られたんだ。

私が固まっていると、和樹はゆっくり歩いて来て笑顔で言った。

「これ、落としただろ」

手には捜していたホテルの鍵がある。

私は泣きそうになった。

「理沙ちゃんが見つけてくれたんだ。馬鹿だな、恥ずかしがらずに言えばいいのに」

< 33 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop