契約彼氏-ニセ彼氏-
杖は大理石の床を滑って向こうまで飛んでいた。
その杖を拾う手。
骨ばった大きな手。
私は痺れたように体が動かせなかった。
和樹がそこにはいる。
理沙や瀬戸君たちも一緒だ。
こんな無様な姿を皆に見られたんだ。
私が固まっていると、和樹はゆっくり歩いて来て笑顔で言った。
「これ、落としただろ」
手には捜していたホテルの鍵がある。
私は泣きそうになった。
「理沙ちゃんが見つけてくれたんだ。馬鹿だな、恥ずかしがらずに言えばいいのに」