契約彼氏-ニセ彼氏-
ダブルベッドが空間の殆どを占める部屋に、私と和樹はいる。
私は呆けたように椅子に座り、和樹は窓際に立ち、夜の街を見ている。
フと、サイドテーブルに灰皿があるのに気づき、「いい?」と聞いた。
人形みたいにコクリと頷く私。
和樹がサッシの窓を少し開けると、街の喧騒が飛び込んできた。
「トモちゃん、あのさ」
もはや「早紀ちゃん」とは呼ぶ気もないらしい。
「ごめん、俺が誤解させちゃったかな。ウチのエージェント、ヘルスは禁止なんだ」
申し訳なさそうな和樹を見たら、全身がカッと熱くなった。
あらゆる嘘をひん剥かれて素っ裸にされた私。
見栄もプライドもズタズタにされて、あんな惨めな姿まで晒した私。
満身創痍の私を、それでも受け入れようとしない男。
コイツも瀬戸君と同じだ。
誰も私を受け止めてくれない。
分かってくれない……。