捕らわれ姫




「では姫野さん、さようなら」



先生は準備室の鍵をかけると、いつもの無表情で私に言ってきた。



「先生、さようなら」


小さく会釈して、私は廊下を歩き始める――と、


「きゃ…っ」


腕を掴まれ後ろに引っ張られた。




勢い良く振り返った先には、人差し指を口に当てる先生がいて

「ナイショですよ」

言って、私の手を掴むと小さな何かを握らせた。




「それでは、また明日」



私が手の中の物を確認して顔を上げると、すでに先生の後ろ姿があった。

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