あたたかい雪
だが実際にさっきの彼は、雪のことに触れようともしなかった。


どうせもう少ししたら二人並んでこの雪景色を見れるのだから、わざわざ話題にしなかったのかもしれないが、どこか釈然としなかった。


自分にとって――いや、いまや二人にとって雪とはそれほど小さなものではないはずだ。


雪を見る、ということを要点に置いた小旅行も何度もしてきたのだ。


現在では彼も充分に感化されているはずだった。


「まあ、いいや」


美穂は考えても仕方ないと思考を停止し、マグカップをテーブルに置くと、先ほど思いついた、棚と椅子の移動を始めた。
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