薇姫/獣帝















「ーーーーやぁ、久しぶり」















不気味で低い声が私の耳に入った。



その声に階段を降りようとしていた私の足が止まった。










『……佐野…』







「クスクス…覚えててくれたんだ?




ありがと」







佐野 奈耶-sano Naya-。







大嫌いで、憎い人。










「何しにきたか…解ってるみたいだね?」






倉庫内の喧騒は無くなり、クスクスと気持ち悪い笑みを零す声だけになっていた。




「ねぇね、じゃぁさ。









ご褒美に、選択肢あげようか?」









……






こうくる事もわかっていた。




きっと、佐野もそれを読まれている事に気づきながら実行している。





それは、





私が逆らえないと確信があるから……
















「琉稀チャン。」








その声で呼ぶな。








大声で叫びそうになるのを息を止めて必死に抑える。







「まず、1。





ここで獣帝を潰される。




2。




あいつ等を潰される。






3。





俺の元にきて、こいつ等を助ける。










どれがいい?」














分かり切った様に私を見上げているのに見下す様な視線を向けてくる。






あいつ等、は確実に藍城の事だろう。











……選択肢なんて、1つしかなかったじゃないか。









「琉稀……やめろ」





來哉の止める声が聞こえた。





來哉……それには、答えられないや。








すっと小さく息を吸って佐野を睨みつけながら口を開いた。






















『3。』












ニヤリ、と佐野の口角が上がった。









< 355 / 430 >

この作品をシェア

pagetop