薇姫/獣帝












…………………………………………………













真っ暗で何も無い、上も下も左右も無い。











一次元を思わせる様な世界は、私を底に底にと誘導するかの様に下に続いていた。










何かに縋ろうともせず、ただ無心で堕ちていった。













………何が何なんだろう。











ふと、奥の奥まで来た頃に感覚が芽生え始めた。







奥の奥、と言っても下を見たらまだまだ先はある。






暗くて何も見えない。












………ここは?








ぐるりと左右上下を見渡す。






だけど、左右上下と見ても暗闇が続くだけだった。














ふわりふわりと不安定な体は信じられないくらい軽くて、冷たい。











………あぁ、そうだ。







あの後…意識を失ってーーー












ーーーどうなったんだっけ?










霧がかった様にぼやけている記憶。











ーーーその中には赤がある。









そう思い始めた途端、また体が勝手に堕ちていく。








ーーーそうだ、來哉、だ。














急に脳の思考回路が閉ざされた様に集中力が切れる。









何も、私を引き止める物が無い。











誰も、私を必要としていない。










どこにも、私の居場所は無い。












堕ちていく体に何もせず……ただ涙を流した。












「……--…」









突然、上、とても上から声が降ってきた。












< 370 / 430 >

この作品をシェア

pagetop