注文の出来ない喫茶店【短編】
「悪かった…気を悪くさせた事を謝る」



私は素直に若者に頭を下げた



「ああ、いいって。
それよかさ、
おっさんの趣味なのはわかるけど、
あれ、止めなよ」



若者が言うあれ、とは
マイセンを始めとする、ブランド物の珈琲カップのことだった



それらは、何でも形から入ろうとする私が
退職金から少しずつ買い揃えたものだ



「何故、いけないんだ?」



「おっさんさ、この店のあるこの辺りって気取ってお茶飲むような所じゃないじゃん」



呆れた顔で若者が言う
確かに、その通りだった
昔からの商店街なんかも近くにあり
客層も恐らくマイセンなぞ知らぬ者の方が多いだろう



「俺はさ、少なくとも喫茶店は寛げる場所であって欲しいと思ってる。だからあんな高いカップで珈琲出されたら、緊張して飲めねぇよ」



若者はあっけらかんと笑った



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