たった一つのお願い


「いやーまさか春ちゃんに理央がお熱を上げるとはね」




本当に鬱陶しい。
気分が台無しだ。




「俺は仕事場に戻る」



「今日はいつもの店で21時集合な」



「分かった」




そうして俺は病室を出た。
どうせ問い詰められる事は目に見えていた。


まだ春陽ちゃんの前で要らぬ事を言われるよりマシだ。


俺はまだ、恋と名の付く物ではないと思っている。



抱き締めたいとかキスしたい等の欲求が生まれていないからだ。


俺が昔付き合っていた女にはよくこれらをせびられた。
だから、まだその手の感情とは違う何かではないかと思っている。
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