荒れ球リリーバー
誠一郎に抱き上げられて運ばれた寝室。

ギシッと軋むベッド。

部屋に響く淫らな音。

荒い二つの吐息。

一糸纏わぬ姿で抱き合い、私達はひとつになる。

唇を重ねながら、囁かれる誠一郎の言葉に、肝心な事は口に出せない臆病な私は心の中で問い掛ける。

「志乃ん中…すげぇ気持ちいい…」

なら、どうして他の女(ひと)としちゃうの?

「好きだよ…志乃…」

なら、どうして浮気するの?

ねぇ。誠一郎。

どうして?



あいつの投げる球は、荒れている。

あいつの女癖は、もっと荒れている。

だけど、それよりもっともっと荒れているのは。

それでもそんなあいつを想って止まない。

私自身に違いない。
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