荒れ球リリーバー
「文句?」と復唱する私。

「そうですよ!ガツンと言うべきです!」

口には出さず視線で、私に訴え掛けて来た気がする。

《これなら、志乃さんでも行けるでしょ?》

素直じゃない意地っ張りな私の考えてなんて、目の前の後輩にはお見通しだったみたい。

「ありがと…華子ちゃん…」と小さくお礼を呟き、私は彼女に背を向け駆け出した。





華子ちゃんと別れ、ドームへ急いで向かう道の途中。

ふと思い付いた事があり足を止め、クルリと向きを変えて別の方向に走り出した。

立ち寄り先は、1DKの自分の部屋。

「あった…」と呟き、クローゼットの中からから取り出したある大切な物を握り締めた。

そして、部屋を飛び出し再び走り出した。

球界屈指の荒れ球リリーバーが待つドーム前へ。
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