荒れ球リリーバー
信用出来ないのも、浮気されるのが分かり切っているのも、決して嘘じゃないよ。

でもね、私にはそれ以上に難しい事があるの。

誠一郎が好きって言う自分の気持ちに従ってアイツの元へ行くって行為は、素直じゃない意地っ張りなまま28年間生きて来た私には世界が逆転しても出来そうにないの。

それでも、華子ちゃんはセイの元へ行けって言うの?

声には決して出せない想いを胸の中で叫びながら後輩の足元を見る私。

「じゃあ、会いに行かなくていいですよ」

「え?」

予想外の華子ちゃんの発言に思わず声を漏らし、視線を彼女の元へ移した。

「ところで志乃さんは、全国区で名前出されて気持ち晒されたままで平気なんですか?
あたしなら、無理ですね。間違いなく猛抗議です」

一人喋り出す後輩に、私は只々唖然と立ち尽くす事しか出来なかった。

「だから!志乃さん!」

「はっ、はい!」

機関銃のように喋る後輩が突然詰め寄って来たから、声を張り上げした返事。

「文句の一つでも言いに行ったら、どうですか?」
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